RESEARCH ・ 調査研究

宿泊施設のGoogle口コミ14,000件を読み解く

評価を分けていたのは「設備」ではなかった——。同一エリアの宿泊施設17施設・約14,000件のGoogle口コミを独自に収集し、一件ずつ読み解いた調査レポートです。

ホテルのフロント周りを背景に、宿泊施設の口コミデータを画面で読み解くアナリストのイメージ

口コミの星の数は、毎日のように見ています。でも、「なぜこの数字なのか」を説明できる人は、ほとんどいません。

「設備が古いから低いんだろう」「立地がいいから高いんだろう」。なんとなくの理由は浮かびます。けれど、本当にそれが原因なのか。どこに手を入れれば、星が動くのか。そこまでは、見えていないことが多いはずです。

私たちは、その「なんとなく」をデータで確かめたくて、この調査を行いました。同じエリアにある宿泊施設17施設、約14,000件のGoogle口コミを集めて、一件ずつ読み解いています。すると、評価を分けていたのは、思っていたものとは少し違う場所にありました。

01 _ 調査の概要

同一エリア17施設・約14,000件を、一件ずつ

ある駅周辺エリアの宿泊施設17施設を対象に、Googleマップ上に公開されている口コミを収集しました。高級ホテル、ビジネスホテル、温泉・スパ付きホテル、ウェディング対応ホテル、民泊まで、形態の異なる施設をまとめて見ています。

調査施設数
17 施設
高級/ビジネス/温泉・スパ/民泊
総レビュー数(概算)
14,311
テキスト付きレビューを対象
加重平均評価
3.82
エリア全体の基準点
オーナー返信あり
14 / 17 施設
返信のしかたは様々
項目数値
調査施設数17施設
総レビュー数(概算)14,311件
加重平均評価3.82
オーナー返信を実施していた施設14施設

調査方法:Googleマップ上に公開されている口コミのうち、テキスト内容のあるレビューを対象に、キーワードの抽出・感情の分類・宿泊体験の段階ごとの仕分けを行いました。口コミはすべてGoogleマップ上の公開情報です。個人名はレポート上で集計処理し、施設名も「施設A〜Q」として匿名化しています。

Point

14,000件を人の目だけで読み切るのは現実的ではありません。私たちは、テキストを機械的に分類したうえで、要所を人が確認する流れで分析しています。「データを集める」だけでなく「読み解く仕組みを持っている」ことが、ここでの強みです。

02 _ 評価の二極化

施設別の評価は、はっきり二極化していた

17施設を横並びにすると、評価はきれいに二つの山に分かれました。駅直結の高級ホテル(施設B・施設P)は4.4前後の高評価グループ。一方、格安のビジネスホテル(施設I・施設L)は3.3前後の低評価グループです。口コミ数が最も多い施設A(5,489件)は4.0で安定していて、このエリアの「基準点」のような存在になっています。

横軸=レビュー数 / 縦軸=評価

4.5 4.2 3.9 3.6 3.3 1,500件 3,000件 レビュー数 → 高評価グループ(4.4前後) 低評価グループ(3.3前後) 施設A 施設B 4.4 施設C 3.9 施設D 施設E 3.6 施設G 3.4 施設H 施設I・L

※評価・件数は調査時点のGoogleマップ公開情報に基づきます。

施設評価件数タイプ
施設A4.05,489高級
施設B4.41,589高級
施設C3.91,481温泉・スパ
施設E3.61,310ビジネス
施設D3.91,206高級
施設G3.4955温泉・スパ
施設H4.0869ビジネス
考察

施設B(1,589件 / 4.4)は、駅直結という立地の強さとサービス品質の両方を保ち、最も安定した高評価を維持しています。一方、施設G(955件 / 3.4)は天然温泉という差別化要素を持ちながら、施設の老朽化が評価を押し下げていました。立地や設備という「条件」だけでは、評価は決まらないことが見えてきます。

03 _ 頻出キーワード

口コミに最も多く出てくる言葉は「清掃」だった

約14,000件のテキストから、よく出てくる言葉を抽出してカテゴリに分けました。高評価につながる言葉と、低評価につながる言葉。その両方で頻出していたのが「清掃」でした。

高評価の理由 TOP5(言及数の概算)

清潔感・客室の快適さ 420 立地・アクセスの良さ 380 スタッフの対応 300 朝食の満足度 250 眺望・ロケーション 200

低評価の理由 TOP5(言及数の概算)

部屋の狭さ 280 施設の老朽化 250 清掃品質のばらつき 200 壁の薄さ・騒音 150 Wi-Fi品質の低さ 120
高評価の理由言及数よく使われる表現
清潔感・客室の快適さ約420件「清潔で快適」「部屋が広い」
立地・アクセスの良さ約380件「駅から近い」「新幹線からすぐ」
スタッフの対応約300件「フロントの対応が良い」
朝食の満足度約250件「ブッフェが充実」「焼きたてパンが美味しい」
眺望・ロケーション約200件「高層階からの景色が最高」
低評価の理由言及数よく使われる表現
部屋の狭さ約280件「スーツケースを開けられない」
施設の老朽化約250件「設備が古い」「水回りが劣化」
清掃品質のばらつき約200件「髪の毛が落ちていた」
壁の薄さ・騒音約150件「隣の声が聞こえる」
Wi-Fi品質の低さ約120件「遅すぎて仕事にならない」
注目すべきパターン

高評価でも低評価でも「清掃」が最頻出する、というのが宿泊業界特有の現象です。高級ホテルでは1回の清掃不備が致命的な低評価に直結し、ビジネスホテルでは「値段相応かどうか」の判断軸になります。また「朝食」が差別化の最大要素で、無料朝食の有無や品質が、ビジネスホテル間の評価差を生んでいました。

04 _ 体験の5段階

宿泊体験を5つの段階に分けて読む

口コミは、ただの感想の集まりではありません。「いつの体験について言っているのか」で並べ直すと、宿泊体験の流れが見えてきます。私たちは口コミを、予約・比較/チェックイン/滞在中/朝食・施設利用/チェックアウトの5段階に仕分けしました。

5段階で見た満足度の動き(感情曲線)

中立 体験の中核 ① 予約・比較 ② チェックイン ③ 滞在中 ④ 朝食・施設利用 ⑤ チェックアウト バーの高さ=その段階の言及量(好評+不満)
段階好評につながりやすい点不満につながりやすい点
① 予約・比較口コミ評価の高さ、会員特典OTAと公式の価格差が不透明
② チェックインスムーズな手続き、アップグレード待ち行列、部屋の準備が間に合わない
③ 滞在中清潔で広い客室、眺望部屋の狭さ、清掃のばらつき、騒音
④ 朝食・施設利用朝食の品数と質、大浴場朝食の混雑、大浴場の衛生状態
⑤ チェックアウトスムーズな精算、荷物預かり混雑、満足客の口コミ投稿率の低さ
考察

「滞在中」の段階が、好評の言及も不満の言及も最も多く、宿泊体験の中核でした。特に部屋の清潔さ・広さ・設備の新しさが評価を左右します。一方、「チェックイン」の待ち時間やフロント対応は第一印象を決めるため、ここでの不満がそのまま低評価に直結しやすい傾向がありました。

05 _ タイプ別の違い

施設タイプによって、評価の「落ちどころ」が違う

同じ「宿泊」でも、お客様の期待値は施設タイプごとに違います。そこで、高級ホテル・ビジネスホテル・温泉スパの3つのタイプに分けて、感情の動きを比べました。

3タイプの感情曲線を重ねる

予約 チェックイン 滞在中 朝食・施設 チェックアウト 高級(高位安定) ビジネス(山谷型) 温泉・スパ(V字型)
高級ホテルビジネスホテル温泉・スパ
加重平均(対象施設)4.10
4施設 / 8,335件
3.74
10施設 / 5,706件
3.55
2施設 / 2,436件
感情曲線の形高位安定
(滞在中ピーク)
山谷型
(滞在中に谷→朝食で回復)
V字型
(設備で底→温泉で急回復)
最大のリスク段階滞在中
(清掃のばらつき)
滞在中
(部屋の狭さ・老朽化)
滞在中
(老朽化・設備故障)

ビジネスホテルは、部屋の狭さや老朽化で滞在中に評価が落ち込みますが、無料朝食や大浴場で「値段以上の満足感」を取り戻す山谷型でした。「バストイレ別」「高濃度炭酸泉」のように、1つの明確な差別化要素が評価を引き上げています。

温泉・スパホテルは、滞在中に施設の老朽化で大きく落ち込み、温泉で劇的に回復するV字型。問題は、温泉の感動が設備への不満で相殺され、総合評価が中位にとどまってしまうことです。

考察

温泉や炭酸泉は、他のビジネスホテルにはない強力な差別化要素です。だからこそ、設備を改善できれば評価が最も大きく動くセグメントとも言えます。「差別化要素はあるのに、別の要因が足を引っ張っている」——データを段階で分けると、こうした構造が見えてきます。

06 _ オーナー返信と評価

オーナー返信と評価には、相関があった

17施設のうち14施設が、口コミにオーナー返信をしていました。その返信のしかたを4パターンに分けて、平均評価と並べてみました。

返信パターン別の平均評価

4.2 3.9 3.6 3.3 4.08 全件・個別 4施設 3.97 全件・やや定型 5施設 3.45 一部・防御的 4施設 3.73 返信なし 3施設 差 0.63pt
返信パターン平均評価該当施設数
全件・個別・丁寧4.084施設
全件・やや定型3.975施設
一部対応 / 防御的3.454施設
返信なし / ほぼなし3.733施設

全口コミに個別返信をしている施設の平均は4.08。一方、一部だけ・防御的に返信している施設は3.45でした。差は0.63ポイントです。

考察

宿泊業界では口コミ件数が数百〜数千件と多く、全件に返信する工数は大きいものです。それでも施設A(5,489件)や施設H(869件)が全件対応を続けているのは、返信の効果を実感しているためと推察されます。返信は「評価そのものを上げる」というより、低評価への丁寧な対応が、口コミを読む次の宿泊検討者に安心感を与える——その積み重ねが評価に表れていると考えられます。

07 _ 改善の優先度

どこから手をつけるか:改善優先度マトリクス

最後に、抽出された課題を「評価への影響度」と「取り組みやすさ」の2軸でマッピングし、優先順位を整理しました。

取り組みにくい 取り組みやすい → インパクト大 最優先(すぐ・効果大) オーナー返信の強化 清掃品質の標準化 Wi-Fi品質の改善 朝食体験の差別化 設備の予防保全 口コミ投稿の促進 重要(中期) 検討(長期) GBP最適化 リノベ投資の判断 公式予約・会員拡大
最優先(すぐ・効果大)
  • オーナー返信の開始・強化:全口コミに個別返信を始める。低評価には具体的な改善アクションを書く
  • 清掃品質の標準化:全タイプ共通の最大ネガティブ要因。清掃の基準と抜き打ちチェックを仕組みにする
  • Wi-Fi品質の改善:ビジネス利用者にとっては「インフラ」。投資対効果が高い
重要(中期で取り組む)
  • 朝食体験の差別化:無料朝食は「あって当然」の段階。品数・提供方法・混雑対策で差をつける
  • 設備の予防保全:エアコン・シャワー・ドアノブの故障が低評価に直結。定期点検で先手を打つ
  • 口コミ投稿の促進:満足した宿泊客からの投稿を増やす依頼フローを設計する
検討(長期で取り組む)
  • Googleビジネスプロフィールの最適化:写真の定期更新、Q&A活用、施設情報の正確性維持
  • リノベーション投資の判断:温泉・スパは投資対効果が最も高い。「温泉×清潔な部屋」で評価4.0以上を狙える
  • 公式予約・会員の拡大:OTA依存から脱却し、リピーター化でLTVと口コミの好循環をつくる
08 _ サマリー

この調査から見えた5つのこと

1
評価には構造的な格差がある

高級(4.10)> ビジネス(3.74)> 温泉・スパ(3.55)。設備投資とサービス品質が評価に直結します。

2
「清掃品質」が全タイプ共通の分岐点

好評にも不満にも最頻出。1回の不備が即低評価に。標準化が最もROI(費用対効果)の高い施策です。

3
オーナー返信が評価と信頼に寄与

全件個別返信4.08 vs 消極的3.45。返信の品質と頻度が評価に相関していました。

4
1つの明確な差別化要素が評価を引き上げる

「バストイレ別」「炭酸泉」など、コスパに明確な付加価値を加えた施設が高評価でした。

5
エリアのイベント需要が全体を牽引

口コミの多くがイベント利用目的。「イベント後の快適な体験」を訴求できる施設が選ばれています。

09 _ 私たちの姿勢

なぜ、私たちはここまで分析するのか

ここまで読んでいただいて、伝わったことが一つあるとうれしいです。それは、口コミは「読むもの」ではなく「データとして読み解くもの」だということです。

星の数を眺めても、打ち手は見えません。けれど、14,000件を段階で分け、言葉を数え、返信のしかたと並べてみると、「どこに手を入れれば数字が動くか」が見えてきます。

私たちが大切にしているのは、施策をひとつ代行することではありません。こうしてデータから現状を正しく把握し、何が効くのかを見極めたうえで、優先順位をつけて動く——その流れ自体を、御社の中につくることです。

口コミ分析は、その入り口のひとつにすぎません。広告・SEO・LINE・データ基盤づくりまで、すべて「データで現状を読む」という同じ姿勢でつながっています。

ABOUT ASETZ

データで、現状を読む。打ち手の優先順位を決める。

この調査でお見せしたのは、AsetZがふだん行っているデータ分析のごく一部です。

口コミ分析・MEO対策のほかにも、広告運用・SEO・コンテンツ制作・データ基盤づくりまで、「戦略から実行まで一貫して」支援しています。御社の口コミや顧客データを使って、同じように現状を読み解き、改善の優先順位を一緒に考えることもできます。無理な営業は一切いたしません。まずは現状の課題を、可能な範囲でお聞かせください。

株式会社AsetZ | マーケティング × DX × AI 伴走支援 / https://marketing.asetz.jp/