RESEARCH

不動産会社24社・約2,100件の
Google口コミを分析してわかったこと

星の数を分けているものは何か。高評価の店に共通するパターンは何か。あるエリアの不動産会社24社の口コミを、すべて集めて分解しました。

不動産会社に寄せられた数多くの口コミを画面上で読み解き、評価を分ける要因を静かに分析するアナリストのイメージ

口コミの星の数は、何で決まっているのか

「同じエリアの不動産会社なのに、評価4.9の店と2.1の店がある。」

この差は、たまたまでしょうか。それとも、何か理由があるのでしょうか。

私たちは、あるエリアの不動産会社24社のGoogle口コミ、約2,100件超をすべて集めて分析しました。星の数を分けているものは何か。高評価の店に共通するパターンは何か。低評価の店は、どこでつまずいているのか。

このページは、その調査結果をまとめたものです。「データを集めて、何が言えるか、どう動かせるかまで分解する」という、私たちの分析の進め方そのものでもあります。

24
分析対象の不動産会社
約2,127
収集した口コミ(概算)
4.55
全体の加重平均評価
5.0 4.0 3.0 2.0 平均評価 口コミ件数 → 全体平均 4.55 売買仲介 賃貸仲介 兼業 管理・総合型
24社の「口コミ件数 × 平均評価」の分布。業態ごとに、評価の帯がはっきり分かれている

この調査について

まず、何を・どう調べたのかを正直にお伝えします。分析は、出典と方法がはっきりしていて初めて意味を持つからです。

調査の概要

項目内容
対象あるエリアの不動産会社 24社
総レビュー数約2,127件(概算)
加重平均評価4.55
オーナー返信を実施していた店舗14社
データの出典Googleマップ上の公開口コミ
分析手法キーワード抽出・感情分析・カテゴリ分類(自然言語処理的アプローチ)

対象には、賃貸の仲介、売買の仲介、賃貸管理の会社など、いろいろな業態の店舗が含まれています。

調べ方

Googleマップに公開されている口コミを集め、テキストのあるレビューを中心に分析しました。一件ずつ目で読むのではなく、出てくる言葉の頻度を数え、ポジティブ・ネガティブの傾向を分類し、「不動産探しのどの段階の話か」でグループ分けしています。

注記

口コミ内容はGoogleマップ上の公開情報です。個人名・店舗名は分析上ですべて集計処理し、このレポートでは特定の会社が分かる形では掲載していません。

ここで一つ、考え方をお伝えします。口コミは「お客様が、お金を払う立場で、率直に書いた声」です。アンケートよりも本音に近く、しかも誰でも読める場所に残り続けます。つまり、集めて分析すれば、その業態の顧客体験の地図がそのまま描ける素材です。私たちはこれを、分析の出発点として大切にしています。

わかったこと1|評価は「業態」で構造的に分かれていた

24社をばらばらに見ても、何も見えてきません。事業のタイプで4つに分けると、評価がきれいに分かれました。

業態別の平均評価

業態加重平均評価店舗数口コミ件数
売買仲介4.926社448件
賃貸仲介4.568社1,473件
売買・賃貸 兼業4.512社52件
管理・総合型3.654社111件
売買仲介 4.92 賃貸仲介 4.56 兼業 4.51 管理・総合型 3.65
売買仲介4.92から管理・総合型3.65まで。同じ「不動産」でも1.27ポイントの差がある

売買仲介が4.92、管理会社が3.65。同じ「不動産」という看板でも、1.27ポイントもの差があります。

なぜこの差が生まれるのか

ここで止まると、ただの「順位表」です。大事なのは、なぜこの順番になるのかです。

口コミの中身を読み込むと、2つの構造が見えてきました。

ひとつは、取引金額とサービス品質が比例していること。売買は金額が大きく、担当者が時間をかけて丁寧に向き合う傾向がありました。FP(ファイナンシャルプランナー)相談やローンのサポートが「付加価値」として高く評価されています。

もうひとつは、「選ばれるか/選ばれないか」の違いです。仲介の店は、お客様が自分で選んで来ます。だから良い対応をする動機が働きます。一方、賃貸管理の会社は、入居者が「選んで契約した相手」ではありません。物件についてくる存在です。入居者に選ばれない構造のため、サービスを良くする動機が働きにくいのです。

Point

これは「管理会社が悪い」という話ではありません。お客様に選ばれる仕組みがあるかどうかで、サービス改善の動機の強さが変わる、という構造の話です。同じことは、どの業界の事業にも当てはまります。

わかったこと2|口コミの言葉が、評価を分ける要因を教えてくれる

約2,100件のテキストから、よく出てくる言葉を抜き出し、ポジティブ・ネガティブで分けて数えました。星の数の裏に、お客様が何を見ているかが現れます。

高評価につながる言葉

高評価の理由出現の多さ(目安)
丁寧な対応(「丁寧に説明」「親切丁寧」)約350件
親身な寄り添い(「親身になって」「寄り添って」)約280件
迅速なレスポンス(「すぐに連絡」「対応が早い」)約180件
希望条件への的確な提案(「希望に合った物件」)約160件
正直なメリット/デメリット説明(「懸念点も隠さず」)約120件

低評価につながる言葉

低評価の理由出現の多さ(目安)
スタッフの態度(「上から目線」「横柄」)約45件
連絡の遅さ・無視(「折り返しがない」「返信なし」)約35件
退去時トラブル(「退去費用が高い」「敷金が返らない」)約30件
嘘・虚偽の説明(「説明と違う」「情報が異なる」)約25件
管理対応の不備(「修繕対応しない」)約20件
高評価につながる言葉 低評価につながる言葉 丁寧な対応 350 親身な寄り添い 280 迅速なレスポンス 180 的確な提案 160 正直な説明 120 態度 45 連絡の遅さ 35 退去トラブル 30 嘘・虚偽 25 管理不備 20 数値は出現件数の目安。高評価の声は、低評価の声よりはるかに多く積み上がっている。
高評価の声(左)は数百件規模、低評価の声(右)は数十件規模。スケールが大きく違う

ここから読み取れること

数を眺めるだけでなく、何が言えるかまで踏み込みます。

最も多い高評価の理由は「丁寧な対応」。これは予想通りです。ただ、見逃せないのが5位の「正直なメリット/デメリットの説明」です。

不動産は、買う側・借りる側が情報で不利になりやすい商品です。だからこそ、デメリットも隠さずに伝える姿勢が、強く信頼につながっていました。逆に、最も致命的なネガティブ要因は「嘘をつかれた」。良いことだけ言って契約させる店は、口コミで確実に評価を落としていました。

つまり、「正直さ」が最大の差別化要因です。これは、広告でいくら良いことを言っても覆せません。日々の接客の中でしか積み上がらない資産です。

わかったこと3|不満は「入居後・退去時」に集中していた

口コミを「不動産探しの流れ」の5段階に並べ直すと、お客様の感情がどこで上がり、どこで落ちるかが見えてきました。

5つの段階と、感情の動き

段階好評ポイント不満ポイント
Phase 1 問い合わせレスポンスの速さ、丁寧なヒアリング返信がない、おとり物件の疑い
Phase 2 来店・内見複数物件の提案、正直な説明条件を聞かず別物件を勧める、急かす
Phase 3 契約手続きスムーズな手続き、ローン相談契約内容と実態の相違、条件の後出し
Phase 4 入居後設備トラブルへの迅速対応契約後に態度が変わる、連絡を無視
Phase 5 退去適正な原状回復、敷金返還退去費用の高額請求、敷金が返らない
満足度 問い合わせ 来店・内見 契約 入居後 退去 売買仲介(右肩上がり) 賃貸仲介(山型) 管理会社(右肩下がり)
業態ごとに感情の動き方が違う。賃貸は内見でピークを迎え、退去で急落する

「入口で勝ち、出口で負ける」構造

ポジティブな声は、Phase 1(レスポンスの速さ)とPhase 2(内見・ヒアリング)に集中していました。お客様を迎える入口は、多くの店がうまくやっています。

問題は出口です。最も深刻な不満は、Phase 4〜5(入居後・退去時)に集中していました。仲介のときは高評価だった店が、管理会社としての退去対応で信頼をすべて失う——このパターンが複数の店舗で確認できました。

入口の接客で勝ち、出口のアフターフォローで負けている。これが、このエリアの不動産会社に共通する構造でした。

業態ごとに感情の動き方も違いました。賃貸仲介は内見でピークを迎えて退去で急落する「山型」。売買仲介はFP相談などで不安が解消され「右肩上がり」。管理会社は回復ポイントがないまま「右肩下がり」です。

Tips

多くの会社が、お金をかけて入口(集客・接客)を磨きます。しかし口コミという長く残る評価は、出口(契約後の体験)でこそ決まっていました。どこに手を打つかは、感情がどこで落ちているかを見てから決めるべきです。

わかったこと4|口コミへの返信が、評価を2.27ポイント動かしていた

24社のうち14社が、口コミにオーナー返信をしていました。返信のあり・なしで、評価に差はあったのでしょうか。

返信の有無と平均評価

区分平均評価
全件に個別返信している店舗4.87
返信していない店舗2.60
2.27ポイント
4.87
全件に個別返信している店舗
2.60
返信していない店舗
+2.27pt
返信あり/なしの差
4.87 全件個別 4.65 やや定型 4.65 テンプレ返信 2.60 返信なし
返信ありの店舗は4.6〜4.9の高評価帯。返信なしだけが2.60まで落ちている

返信の中身でも差が出ました。一件ずつ、お客様の名前や経緯にふれた個別の返信をしている店ほど、評価が高い傾向です。低評価の口コミに対しても、謝罪し、事実を確認し、改善策を示して、もう一度お詫びする——そこまでする店が、高い評価を保っていました。

数字の読み方は、正直に

ここで、データを扱う者としての姿勢をお伝えします。

この2.27ポイントの差を「返信すれば評価が2.27上がる」と読むのは、正しくありません。因果の向きが2通りあり得るからです。

  • 評価が高い(=お客様が満足している)店だから、返信する余裕がある
  • 返信して向き合う店だから、評価が高くなる

どちらが原因かは、この調査だけでは断定できません。

考察

ただし、少なくとも一つ言えることがあります。口コミを読む「次のお客様」から見れば、すべての声に丁寧に返信している店は、それだけで誠実な印象を与えます。返信は、過去のお客様への対応であると同時に、未来のお客様への一番安いプレゼンテーションでもあります。コストが低く、すぐ始められる施策として、最も費用対効果が高い候補だと考えられます。

事実と推測を分けて伝える。これも、データを扱ううえで私たちが守っていることです。

調査から見えた、改善の優先順位

これらの分析を、「評価への影響の大きさ」×「すぐ実行できるか」の2軸で整理すると、何から手を付けるべきかが見えてきます。

顧客インパクト → 実施容易性 → 最優先(すぐ・効果大) 口コミ返信 初回レスポンス速度 正直な説明の標準化 退去トラブル防止 接客品質の標準化 口コミ依頼の仕組み化 GBP整備 管理品質の数値管理
右上(効果が大きく、すぐできる)ほど優先。口コミ返信・レスポンス速度・正直な説明が最優先に並ぶ

最優先(すぐ・効果大)

  • 口コミ返信の開始と強化:すべての口コミに個別返信。低評価には真摯な謝罪と改善の意思を示す。
  • 初回レスポンスの速度改善:問い合わせから24時間以内の返信を徹底する。ここが店舗選びの最重要ポイント。
  • 「正直な説明」の標準化:デメリットも含めた説明を仕組みにする。これが信頼の土台になる。

重要(中期で取り組む)

  • 退去トラブルの防止:入居時の状態記録を徹底し、退去費用を事前に書面で説明する。
  • 接客品質の標準化:高評価の担当者のやり方を、組織の知識として共有する。
  • 口コミ依頼の仕組み化:満足度の高いお客様に、レビュー投稿をお願いする流れをつくる。

検討(長期で取り組む)

  • Googleビジネスプロフィールの整備(写真・営業時間・Q&A)
  • 管理品質の数字での管理(修繕対応のスピード、入居者満足度調査)
  • 契約後のフォロー体制(入居1ヶ月チェックなどの仕組み化)

この調査が示していること

最後に、この一件の調査を、もう少し大きな話につなげさせてください。

私たちがここでやったことは、特別な裏データを使ったわけではありません。誰でも見られる公開情報を、集めて、分解して、何が言えるかまで読み切っただけです。

そして、わかったことのほとんどは「もっと広告を出そう」ではありませんでした。「返信を始めよう」「出口の体験を直そう」「正直さを仕組みにしよう」——つまり、集客の前に、顧客体験の土台を整えるという話です。

単発で広告やMEOだけを打っても、退去対応で評価が落ちる構造が残っていれば、効果は続きません。どこが本当のボトルネックかをデータで把握し、打つ順番を決める。私たちが「施策の前に、まず分析と体制から」とお伝えしているのは、こうした構造が、業界を問わず繰り返し現れるからです。

Point

データ分析の価値は、きれいなグラフをつくることではありません。「だから、次に何をすべきか」を一つに絞り込むことです。この調査で言えば、24社・2,100件の声が指していたのは「口コミ返信」と「出口の体験」でした。

こうした分析を、御社のデータで

このページでお見せしたのは、私たちが日々行っているデータ分析の一例です。Google口コミに限らず、サイトのアクセスデータ、広告の成果、顧客の行動——御社にすでにあるデータを集めて、「次に何をすべきか」が見える形に分解します。

「うちのデータでも、何か言えることはあるのか」。そんな入口で構いません。無理な営業はいたしません。まずは現状の課題を、可能な範囲でお聞かせください。

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執筆: 牧野 悠(株式会社AsetZ 執行役員 / マーケティングDX事業責任者)
本レポートは、Googleマップ上の公開口コミをもとに、株式会社AsetZが独自に集計・分析した調査研究です。数値は調査時点・対象範囲における集計値であり、特定の企業・店舗の評価を断定するものではありません。出現件数等は概算を含みます。

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